今や当たり前に生活に根差し、無くてはならない企業に成長を遂げたAmazon。歴史上最短で売上高1000憶ドルに到達した会社で、世界でも数少ない時価総額が1兆ドルの会社でもあります。社員数もなんと64万7000人を超えています。CEOのジェフ・ベゾスは毎年株主向けにレターを発行しており、ベゾスの考えや戦略が記されています。それでは早速見ていきましょう。
1.良い失敗を促す
これは本当に大切なのですが、継続して実験を行わない会社や、失敗を許容しない会社は、最終的には絶望的な状況に追い込まれます。会社の命運が尽きて、もはや神頼みしかできない状態に陥ってしまうのです。一方、常に賭け続けてむしろ賭け金を引き上げていくような会社は、実は社運そのものを賭けるようなことはしないので、勝ち残ります。社運を賭けるなんてことが、うまくいくはずはありません。そんなことをするときは自暴自棄になっているはずですから。最後まで決して手を付けるべきでない領域なのです。
2014年「ビジネスインサイダー」カンファレンス「IGNITION」
Amazonには「失敗」が予算に組み込まれており、失敗しやすい環境が整っています。とはいえAmazonも数多くの失敗をしています。1つはAmazonオークション、そして2つ目ファイアフォンです。このファイアフォンの失敗には最大規模の損失が計上されました。ですがこの開発チームはこの教訓を活かしてAmazonエコーのハードウェアとアレクサを結実させ、多額の利益をもたらしました。
2.大きなアイデアに賭ける
マーケットプレイス、プライム、AWSこの3つのサービスはどれも最初は果敢な賭けでしたし、堅実な人からはうまくいくはずがないという声が(頻繁に!)届きました。ですが今になって見れば明らかでしょう。本当に幸運なことに、どのサービスも非常に優れたものになったのです。
ベゾス(2014年版レター)
Amazonは普通の企業だと考えないようなサービスをいくつも成功せています。マーケットプレイスも最初はAmazon以外の売り手取りを取り込むという考えはひどいアイデアだとする意見が多数あったようです。またフリースーパーセイバー・シッピング(配送日数が延びる方法を選ぶ代わりに配送料が無料になるサービス)や、AWS(アマゾンウェブサービス)も同様に反対する意見がありました。
3.顧客にこだわる
Amazonにはカスタマーエクスペリエンスの3本柱というものがあります。それがこれです。
・低価格
・最高の品揃え
・早くて便利な配送
間違いなく、お客様が小売業界で重視しているのは、価格の安さ、品揃えの多さ、そして配送の速さと使いやすさです。この傾向は時が経っても変わらないでしょう。
ベゾス(2008年版レター)
顧客にこだわるとは、とことん問い続ける姿勢であり、常に基準を上回ることを意味します。ベゾスはその極端ともいえるところまで進んでやっと満足するレベルに達するのです。
4.所有者意識を持たせる
多才で能力のある社員を雇用することと、そのような社員を手放さないことに今後も力を入れていきます。また、社員への報酬は現金よりもストックオプションに重きを置きます。当社がこれから成功するか否かは、やる気にあふれた社員をどれだけ集めて手元に留めておけるかに大きくかかってきます。そのような社員であれば必ず、Amazonを自分のこととして考えられるようになります。そうすれば実際に、Amazonは社員一人ひとりのものになるのです。
ベゾス(1997年版レター)
Amazon社員には、本当に会社を所有しているかのように考えることが求められています。社員の査定基準にも「会社を所有しているかのように行動できているか」という項目があります。また、株主にもシェアホルダーからシェアオーナーへと呼び方を変えました。これは長期にわたって株式を保有してもらおうとするベゾスの信念を感じます。
社員への所有者意識の高めかたについてはこんな制度を設けています。
「退職ボーナス制度」はザッポスの有能な経営陣が考案した制度で、Amazonでもフルフィルメントセンターの社員を対象に続けています。ごく単純な仕組みで、年に1回、社員に対して「辞めるならボーナスを支給します」と提案するのです。自分が本当は何を望んでいるかを全社員に手を止めて考えてもらうのです。長い目で見れば、社員が不満を抱えたまま働き続けることは、社員自身にとっても健全ではないからです。
ベゾス(2013年版レター)
5.常に1日目だと信じる
ここでいう1日目とは日付ではなく概念としての1日目です。
2日目は停滞です。そのあとに続くのは迷走、さらに痛ましい衰退、そして最後には死です。ですから、当社は常に1日目なのです。
ベゾス(2016年版レター)
この理念の中で重要なのが、「プロキシー」という状況に陥らないことです。「プロキシー」とは、褒められない行動や決定をしたときに、言い訳するために使われるあらゆる手段のことを指します。また、これは言い換えると、顧客にとって正しいことのためであれば「会社の方針や手順から外れてもかまわない」ということになります。
これほどまでの大企業に成長を遂げたAmazonの経営戦略や思考方法から私たちが得られるもの、また真似すべきものが非常にたくさんあるように感じます。しかもこの原則には難易度が高いものはないので明日からでも取りかかれるはずです。
おわり
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